『剣の精神誌 - 無住心剣術の系譜と思想』を読了

「敵を敵として見ず、また、敵と対立する自分というものを意識しないで、敵と向かい合うことが肝要である」、そして、「極めたもの同士で戦うと、お互いに打てない「相ヌケ」になる」という無住心剣術!

武術研究者、甲野善紀さんが江戸時代中期の天才剣士「真里谷円四郎」について研究した『剣の精神誌 〜 無住心剣術の系譜と思想』をようやく読み終えました。

途中、他の本にいろいろ手を出しながらも、面白くてゆっくりゆっくり1ヶ月くらいかけて読んだのですが、読み終わった今も、おそらくは2割程度しか頭に入っていない気がしてて、またどこかのタイミングで読み返してみようと思います。

ちなみに、無住心剣術は僕が稽古をしている新陰流兵法の流れも汲んでいて、本書を読むことで戦国時代から江戸時代にかけての剣術の歴史も垣間見ることができました。

禅を欧米に広く紹介した鈴木大拙が「相ヌケ」を高く評価して喧伝したという記述も興味深く、甲野さんはその理由として「殺人が良くないことと知りながら、人類の歴史の中で殺し合いがなくならないというパラドックスに苦しんできた人間にとって、人間と人間が命をかけて立ち合いながら、お互いに打てず、打たれずの状態になって「相ヌケ」になる、という無住心剣術の理合はたまらない魅力であったろう。」という自説を展開していました。

でも、そのパラドックスはまさに江戸時代の武士が抱えていたものでもあるかもしれません。なぜなら、江戸時代は武士の世なのにすでに戦国時代ではなく「泰平の世」という、戦いがない時代になってしまったから。だけど、武士の魂とも言える剣を捨てることはできない。だからこそ、「殺人剣」ではない「活人剣」という言い方で剣の重要性を再定義し、そこに「禅」の要素が色濃く入ってきたということなのでしょう。

また、本書では茶の湯についても触れられていたのですが、やはり、「剣術」と「禅」と「茶の湯」は切り離せない関係がありますね。

その繋がりをもっと身体で感じるためにも、僕自身が抜刀術、剣術、茶道の稽古に精進したいと思っています。

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Keiichi Toyoda Official Website

スパイスアップ・ジャパン(代表取締役)/神田外語大学(客員教授)/上智大学(非常勤講師)/レインボータウンFM(ラジオパーソナリティ)/NPO留学協会(副理事長)/グローバル人材育成/海外"殻破り"研修/ポジティブリーダーシップ/変革マインドセット/アルゼンチン育ち/上智大学卒業/IE University(スペイン)卒業/合気道/翡翠流抜刀術/著書『人生を変える単純なスキル』など全19冊